ローカルとグローバル 本と花

買わなければよい、のか?

投稿日:


チョコレートの真実 [DIPシリーズ]


チョコレートの原料カカオは、チョコレートを見たことも味わったこともなく、学校にも行けずに働かされる、途上国の子どもたちが作っている。

アフリカでは4人に1人の子どもが児童労働に巻き込まれているらしい。


■ 僕ら消費者が安価なチョコレートを食べている背景
——————–
・植民地化と戦後の経済破綻、
・破綻を食い止めるために債務を拡大、
・債務返済、外貨を稼ぐために一次産品・商品作物に依存、
・そのため、自国で消費する食料は輸入に依存、
・世銀とIMFに押し付けられた経済財政政策・構造調整プログラム、
・ブローカーによる需給操作のテクニック、
・チョコレート企業・多国籍企業によるカカオ豆の低価格競争、
・専制的な指導者層の誤った国家運営と腐敗、
・秘密組織・ネットワークによる児童売買、
・軍・警察の腐敗と暴力の蔓延、

・“極めて危険な状況”で働く子どもたち。
——————–

フェアトレードすらも、売るためのおいしいビジネスになりかねない、またそれは、「途上国の農民に恩恵を与えるよりも、先進国の罪悪感をなだめるためのもの」とのこと。
フェアトレードが要求する、認証にかかる費用や手続きは、アフリカのカカオ農民にとってはフェアではない。

なら、僕らはもはや、チョコレートやコーヒー、バナナなど、途上国の搾取を助長するこうした商品を「買わなければよい」のか?

ずっとある議論だけれど、どこかに答えの手がかりがないだろうかね。



チョコレートの真実 [DIPシリーズ]』、キャロル・オフ、英治出版、2007年
======================

・農民や農業監督者は少年たちをほとんど死ぬまで働かせていた。少年たちは、食べ物もほとんどなく、夜は鍵をかけられた小屋で寝泊まりし、年中せっかんされていた。肩や背中にひどい傷があった。重いカカオの袋を担いだためにできた傷もあったが、虐待を受けたらしい傷もあった。、、、カカオ農園に子どもたちを送り込んでもらうため、農民が密輸組織に金を払っているのは間違いない。、、警察も賄賂を受取、見て見ぬふりをしているという。 154

・少女たちは頭上に重い袋を高く積み、少年たちは腕と同じくらいの長さのナタを引きずっている。、、年長の少年たちは、有害な殺虫剤、殺菌剤散布用の器具を背中に背負っている。防護服なしで裸足だ。、、、さらされる危険について母親たちに尋ねると、彼女たちは笑い、防護マスクの値段は、カカオを市場に出すために払う賄賂と同額だという。両方は払えない。247

・15,000人のマリ人の子どもたちがコートジボワールのカカオ、コーヒー・プランテーションで働いている。多くは12歳以下で、140米ドルで年季強制労働に売られ、1日12時間、年に135ドルから189ドルで働く。

・そのチョコの値段は約500CFAフラン(約120円)だと告げると、信じられないというふうに、みな目を丸くした。そんなちっぽけなお菓子にそんな大金。それだけあれば、立派な鶏でも米一袋でも買える。少年の日給、三日分よりもまだ多い―もちろん、給料が払われていればの話で、払われているとは到底思えないが。17

・私の国の子どもたちは、一つのチョコレートを二、三分で食べてしまうと説明すると、少年たちは本当に驚いている。何日も苦労して働いて作られたものを、地球の反対側では一瞬で食べてしまうのか。

・私の国には学校に向かいながらチョコレートをかじる子どもがいて、ここには学校にも行けず、生きるために働かなければならない子どもがいる。
 私の国で愛されている小さなお菓子。その生産に携わる子どもたちは、そんな楽しみをまったく味わったことがない。おそらくこれからも味わうことはないだろう。
 これは私たちの生きている世界の裂け目を示している。カカオの実を収穫する手と、チョコレートに伸ばす手の間の溝は、埋めようもなく深い。 18

・第二次世界大戦後、宗主国が自国の再建に資源をまわしたため、アフリカ経済は急激に失速した。戦時中にあった賃金と物価の統制は解除されて、アフリカ産一次産品の価格は暴落。いずれにしろ、その頃までに、農産物生産者に不利なシステムはできあがっていた。ロンドンやニューヨークのブローカーによる需給操作のテクニックは完成の域に達していた。価格は底なしの低迷を続け、こうしたブローカーと彼らの顧客、すなわちチョコレート企業に有利になった。カカオ取引の底辺にいるアフリカ農民の収入は減り続けた。一方で、ヨーロッパからの強いられた農法に不可欠の殺虫剤や除草剤の値段は上がり続けた。136

・1944年7月、ブレトン・ウッズに集まった各国代表団。このとき設立した世界銀行とIMF(国際通貨基金)が戦後世界で善意の力を発揮する機関になると、彼らは本気で考えていたことになっている。、、それまでの数十年のような政治的・経済的大混乱が再び怒るのを避けるため、構造を整える絶好の機会と思われた。
 半世紀以上もの実績を経た今日、この2つの国際機関の処方箋を受けた国々は、善意という言葉を口にしないだろう。途上国をいじめ、意のままに動かす政策は、幻想を砕き、怒りを生んだ。  144

・1980年代後半、世銀とIMFは史上最も強力な国際機関に発展、、、二機関は、危機的状況にあった第三世界の経済に、資本主義的・自由主義的な政策を押し付ける強硬派の道具になった。多くの第三世界諸国が、専制的な指導者層の誤った国家運営と腐敗のおかげで、経済危機に陥っていったのだった。 145

・世銀とIMFによる処方箋として発展途上国に押し付けられた経済財政政策は、むしろ、先進諸国の銀行や国庫、企業のトップに恩恵を与えるものだった。、、、世銀とIMFのトップはアメリカ政府によって選ばれる。145

・発展途上国の中には、破綻を食い止めようとした結果、指導者層が債務をふくらませた国々があった。、、こうした国々は世銀に救いを求める。、、、債務国では、農業は輸出向けに商品作物に絞られ、自国で消費する食料はほとんど(主にアメリカから)輸入することになった。国営企業は民営化され売却された(売却先はたいてい外資系多国籍企業)。一次産品は市場に放り出され、底値で売られる。こうした政策は「構造調整計画(SAP)」と呼ばれた。

・近年、カカオ豆の売買という汚い仕事は、カーギル社やアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド社など巨大食品企業の領分になっている。こうした会社は名前が表にでることなく、チョコレート会社に代わってチョコレート産業の重要課題に対処できる。特に、製品価格を抑えるためにカカオ豆の安価な供給源を確保するという課題は、常にある。消費者がフェアだと感じるのは、価格が安く設定されることだ。たとえそうした低価格の商品がどこかで不公正を生んでいたとしても。121

・現在のカカオ豆の価格では、生産コストを賄うことさえできない。まして家族など養えない。 248

・反バクボ勢力とリベリア人傭兵部隊には共通の目的があった。肥沃なカカオ生産地帯をできる限り支配すること。それによって、テイラーはコートジボワール国内に足がかりを作れるだろう。またテイラーにとって、カカオの利益は魅力的だった。シエラレオネのダイヤモンド鉱山への電撃的侵略がもたらした利益の再現になるだろう。これまで彼の軍事的計画の財源は宝石だった。カカオは彼の新しい財源になると思われた。この小さな褐色の豆の潜在的価値は、テイラーの妄想的な栄光の夢を財政的に支えた「紛争ダイヤモンド」に匹敵するものだった。216

・アフリカは警官の腐敗で知られている。しかしコートジボワールのカカオ生産地帯は、第三世界の汚職にまったく次元の違うスタンダードを設定している。道であった憲兵は、トラックや車の窓からカラシニコフ銃を突き出し、銃口を突きつけて金を要求する。彼らの多くはヤシ酒に酔っており、抵抗は許されない。244

・フェアトレードの成功の本当の理由は、実は農民の収入の問題ではない。、、「倫理的」消費の人気は、生産者よりも消費者の問題だ、、、「消費者は、自分が問題に関与しているというのを好みません。解決の一端を担わせろと製造会社に要求する。そうやって、熱帯雨林の破壊や地元文化の消滅、地球温暖化といった問題を前にして感じる、絶望や悲観主義や無力感を自ら慰めるわけです。」 351

・フェアトレード運動が、途上国の農民に恩恵を与えるよりも、先進国の罪悪感をなだめるためのものだった、、、 351

・これほど多くの消費者が大量生産品に代わるものを求めるようになるとは、どの企業も思いもよらなかった。今や彼らは知ったのだ。「緑」は売れる。有機食品はおいしいビジネスだ。356

・フェアトレード認証にかかる金は、、小規模事業にとっては目が飛び出るほど高い。、、収入の20~25%も払っている。その中には専門家の先生方が定期的に視察にやってくる費用も含まれる。「フェアトレードで成功している組合や協会がどのくらいあるか知りませんが、そう多くはないと思っています」、、最大の心配は、複雑な書類手続きを農民が自力でできないだろうということだ。、、、それでもフェアトレード認証機関はその手続きを要求する。361

・私が会ったマリ人少年は仕事と冒険を求めてコートジボワールに行き、人生の一部をカカオ農園の強制労働に費やした。彼らはチョコレートを見たことさえなくても、チョコレートの本当の値段を身をもって知った。チョコレートには、自分たちのような何百人という子どもを奴隷にするという計り知れないコストが含まれているのを、今や彼らは知っている。彼らはチョコレートの味を知らず、これからも知ることはないだろう。、、、未来を見通してみるとすれば、ずっとむかしから続くこの不公正が正される見込みは、ほとんどない。

======================

Error: Failed to retrieve data for this request.

-ローカルとグローバル, 本と花

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

幸せよりも大切なこと

—— 幸福は、意味ややりがいのある経験の結果やってくるもの(アウトプット)であると同時に、その幸福によって健康や成功が得られてさらに幸福が増すというもの(インプット)にもなる。 …

15年来の思い

左手首にずっとつけていたゴムの輪っかが切れてしまいました。 これ、フィリピンの友だちからもらったものなんです。たしか、2000年だったかな。 ということは、かれこれ、もう15年近くつけていたっていうこ …

“進化”の担い手としての子ども

脳と言語が、相互作用によって双方がともに進化する「共進化」=言語を活用する人間の「脳の進化」と、人間の脳の淘汰圧によって起こる「言語自体の進化」。 子どもの脳が淘汰圧(言語を受け入れられる学習バイアス …

自分の主観で相手を破壊しない

ベルント・ベッヒャーとヘラ・ベッヒャーというドイツ人の夫婦は、二人で写真を撮り続けました。 彼らの作品は、採掘塔、給水塔、溶鉱炉、冷却塔などの大きな工業建築物を、まったく同じように撮影して、同じ種類ご …

「田舎暮らし」、もう一つの側面

この、新潟の山奥での暮らし、よく「田舎暮らし」と言われます。 東京からここに引っ越してきて、「田舎暮らしがしたかったんだね」って、東京の人にも、ここ地元の人にも、なんとなく言われたりします。 自然がの …

Photo Gallery

プロフィール

 わたなべまさゆき

 新潟県在住。
 2012年の秋に東京から移転して来ました。
 現在、生活基盤構築中、農業研修中です。